シネマの窓(12/12)

カテゴリ「シネマの窓」の記事

2015年5月16日 (土)
あの日の声を探して

 久しぶりの映画鑑賞。

 映画は1999年に起こった第二次チェチェン紛争を題材に、両親を殺され、赤ん坊の弟や姉・ライッサ(ズクラ・ドゥイシュビリ)と離ればなれになり、声を失った9歳の少年ハジ(アブドゥル・カリム・ママツイエフ)が、紛争調査にフランスからやって来たEU職員の女性・キャロル(ベレニス・ベジョ)に拾われ、過酷な状況を生きぬいて行くさまを丁寧に描いている。
 また、ハジと出会い自分の無力さや、少しずつ心を開いてゆくハジの姿に小さな幸せを見出すキャロルの奮闘を優しく見守っている。
 一方、ロシア軍に強制入隊させられた若者が、殺人兵器に変貌して行く戦争の狂気を、戦場の臨場感を伴って描いている。

 戦争を正面から叫び、平和の尊さを観るものに突きつけている。

(於いて 元町 シネ・リーブル神戸 劇場②) 
監督:ミシェル・アザナビシウス
脚本:ミシェル・アザナビシウス
撮影:ギョーム・シフマン
出演:ベレニス・ベジョ/ズクラ・ドゥイシュビリ/アネット・ベニング/マキシム・エメリヤノフ/アブドゥル・カリム・ママツイエフ
原題:THE SEARCH
配給:ギャガ
日本公開:2015/04/24
2014年/フランス・グルジア/135分

第二次チェチェン紛争
チェチェン独立派勢力(チェチェン・イチケリア共和国等)と、ロシア人及びロシア連邦への残留を希望するチェチェン共和国のチェチェン人勢力との間で発生した紛争であり、1999年に勃発した。2009年4月16日に国家対テロ委員会は独立派の掃討が完了したとして対テロ作戦地域からの除外を発表、10年の長きにわたった紛争は終結した。

紛争の再開
チェチェンの独立派勢力がロシアからの独立を目指したことにより勃発した第一次チェチェン紛争は、1996年に一応の終結を見ていた。1997年5月にはハサヴユルト協定が調印され、5年間の停戦が合意されていた。 ところが1999年8月、独立最強硬派のシャミル・バサエフとアミール・ハッターブに率いられた1500名程のチェチェン人武装勢力が隣国ダゲスタン共和国へ侵攻し、一部の村を占領するという事件が発生する。また同時期にモスクワではアパートが爆破されるテロ事件が発生し百数十名が死亡した。これを受けてロシア政府はチェチェンへのロシア連邦軍派遣を決定。ウラジミール・プーチン首相の強い指導の下、9月23日にはロシア軍がテロリスト掃討のため再びチェチェンへの空爆を開始し、ハサヴユルト協定は完全に無効となった。

紛争の拡大
戦争の最初の数ヶ月間、ロシア軍は自軍の死傷者数を抑えるために制空権の優位性をうまく利用し、チェチェン・イチケリア共和国の事実上の首都であるグロズヌイや他の主要都市への激しい絨毯爆撃や弾道ミサイルによる攻撃を行った。 チェチェン共和国の回廊地帯は都市の市民たちの避難場所になった。 西側諸国はロシア連邦軍による抵抗運動の処遇や、ロシア側、チェチェン側双方で行われた拷問、強姦、略奪、密輸出入、横領などの犯罪を非難した。 ロシア側は武装勢力に対する攻撃の中でクラスター爆弾、燃料気化爆弾、弾道ミサイルなどを使用したが、これらの攻撃によって民間人への被害も発生している。 2002年3月、アミール・ハッターブが殺害され アミール・アブ・アルワリドが後を引き継いだ。( Wikipedia 最終更新日 2015.01.29)

投稿者 愉悠舎 日時 2015年5月16日 (土) シネマの窓 | 個別ページ


2015年6月29日 (月)
愛を積むひと

 神戸に行った日は映画館へ足を運ぶことが多い。

 この日は観たい映画が目白押し。是枝裕和監督の「海街 diary」、キング牧師の実像に迫った「グローリー/明日への行進」、佐藤浩市、樋口可南子が演じる「愛を積むひと」、淡路島を描いた「種まく旅人 くにうみの郷」、小説・『吉里吉里人』を書いた井上ひさしの『東慶寺花だより』に基づいて映画化された「駆込み女と駆出し男」。

 「えい、やぁ!」と選んだのが「愛を積むひと」。

 東京の下町で工場を営んでいた夫婦・篤史(佐藤浩市)と良子(樋口可南子)は傾いた工場をたたみ、北海道に移住する。 

 重い病を患っている良子は命の限りを篤史に告げず、時にふれ篤史や娘・聡子(北川景子)に遺書をしたためる。
 一方で篤史に家の周りを石塀で囲むことを勧める。
 石塀造りを手伝いにきたアルバイト青年・徹(野村周平)らとの日常を紡いでゆくなか、良子が逝ってしまう。

 悲嘆に暮れる篤史に良子の遺書が語りかけてくる。
 良子の遺書に励まされ、篤史はいろいろあった娘・聡子や、人とうまくなじめない青年・徹との距離を縮めていく。
 人々と折り合いをつけながら篤史は前へ足を踏み出す。

 都会を捨て大自然に抱かれ、過ぎし日の人生を糧に、再生を期す夫婦の背に射す夕陽が淡く優しい。

 大雪山を臨む四季の移ろいに心が洗われる。

(神戸ハーバーランド OSシネマズ スクリーン4 6/26)
監督・脚本: 朝原雄三
原作: エドワード・ムーニー・Jr.
脚本: 福田卓郎
音楽: 岩代太郎
出演:佐藤浩市/樋口可南子/北川景子/野村周平/杉咲花/吉田羊/柄本明
配給:アスミック・エース・松竹
劇場公開日:2015/06/20
2015年/日本/125分
投稿者 愉悠舎 日時 2015年6月29日 (月) シネマの窓 | 個別ページ


2015年8月13日 (木)
野火

 過去において、大岡昇平の小説・「野火」を何度読もうと思ったか、その度に思いとどまった。
 この度、意を決して映画・野火を観た。

 映画の内容や感想は私の筆力の及ぶところではない。

 そこでWikipediaにすがる。

小説・「野火」
太平洋戦争末期の日本の劣勢が固まりつつある中でのフィリピン戦線が舞台である。 主人公田村は肺病のために部隊を追われ、野戦病院からは食糧不足のために入院を拒否される。現地のフィリピン人は既に日本軍を抗戦相手と見なす。この状況下、米軍の砲撃によって陣地は崩壊し、全ての他者から排せられた田村は熱帯の山野へと飢えの迷走を始める。 律しがたい生への執着と絶対的な孤独の中で、田村にはかつて棄てた神への関心が再び芽生える。しかし彼の目の当たりにする、自己の孤独、殺人、人肉食への欲求、そして同胞を狩って生き延びようとするかつての戦友達という現実は、ことごとく彼の望みを絶ち切る。 ついに「この世は神の怒りの跡にすぎない」と断じることに追い込まれた田村は「狂人」と化していく。 Wikipedia 最終更新日 2015.07.25

 戦争は人の心身を荒廃させ、人間を思考停止の世界へ追いやる。
 戦後70年、日本はまだ戦争を終えていないのかも知れない。                  

監督・脚本: 塚本晋也
原作: 大岡昇平
音楽: 石川忠
撮影: 塚本晋也/林啓史
出演:塚本晋也/リリー・フランキー/中村達也/森優作
配給:海獣シアター
劇場公開日:2015/07/25
2014年/日本/87分
(神戸元町 シネ・リーブル 劇場③ 8/11)
投稿者 愉悠舎 日時 2015年8月13日 (木) シネマの窓 | 個別ページ


2015年12月 8日 (火)
杉原千畝(スギハラチウネ)

 ナチから逃れようとするユダヤ人に、日本政府の反対を押してビザを発行した外交官・杉原千畝の物語。

 1940年(昭和15年)、ナチズムが荒れ狂うヨーロッパで日本の通貨ビザを求めて、リトアニアの日本領事館に押し寄せるユダヤ難民の窮状を、杉原千畝(唐沢寿明)は日本政府の了解がとれぬまゝ、自らの決断で通過ビザを発給する。

 領事館の閉鎖までビザ発給を続けた杉原千畝の苦悩と覚悟、その前後の事情をヒタヒタと迫る軍靴の中に描いている。

 あのナチの時代、失うべき多くを持つ優秀な外交官・杉原千畝が、全てを捨てユダヤ難民に心を寄せ、人の道に生きる姿は清々しい。

 あの戦争の時代、ヒューマンに徹した杉原千畝に日本人の矜持を思う。


監督:チェリン・グラック
脚本:鎌田哲郎/松尾浩道
製作:中山良夫/市川南
出演:唐沢寿明/小雪/他
配給:東宝
公開日:2015/12/05
2015年/日本/139分
(神戸ハーバーランド OSシネマズ スクリーン7 12/06)

↑「ユダヤ人を救った日本のシンドラー(杉原千畝物語)」 
「ACTIONなう!実行委員会」から贈られて来た電子書籍

 映画館内に「『杉原千畝』の軌跡×神戸『流氓ユダヤ』の記憶と称し、何点かの写真と記事が展示されていた。

 展示の読売新聞の記事によると、リトアニアの日本領事代理・杉原千畝が発行した通過ビザを手にシベリア鉄道を使って敦賀へ、そこから陸路神戸にやって来たユダヤ難民は6千人とも言われており、その多くは日米開戦前に上海に移り、さらにアメリカ、カナダ、オーストラリアへと渡って行った。
 以下に展示の写真の中からその一部を掲載する。

☆74年前の今日、12月8日は日本がアメリカの真珠湾を奇襲攻撃し、日本の破滅に拍車をかけた日である・・・。

投稿者 愉悠舎 日時 2015年12月 8日 (火) シネマの窓 | 個別ページ


2016年2月28日 (日)
母と暮せば

 昨年の暮れ公開された山田洋次監督の「母と暮せば」を観た。
 公開から二ヵ月半、ロングランのお蔭で間に合った。

 井上ひさし氏が晩年に構想していた、「ヒロシマ」・「ナガサキ」・「沖縄」をテーマにした「戦後命の三部作」の意思を山田洋次監督が引き継ぎ、「ナガサキ」をテーマに制作された。「ヒロシマ」が舞台である井上ひさしの戯曲『父と暮せば』と対になる形となっている。( Wikipedia 最終更新日 2016.02.11)

 戯曲・「父と暮せば」は故・黒木和雄監督の手で映画化されている。
 また、「父と暮せば」は井上ひさしの劇団・「こまつ座」により上演されている。
 父の役を映画・「母と暮せば」にも出演している辻萬長(つじかずなが)が演じた。

 長崎で助産婦ををしている伸子(吉永小百合)の前に、3年前長崎の医科大学内で原爆に合い亡くなった息子・浩二(二宮和也)が現われる。
 伸子は思い残した胸の内を浩二に打ち明け、浩二はそれに応える。
 その日から浩二は頻繁に伸子の前に現れる。
 伸子と浩二は思いの丈をぶつけ合う。浩二の兄や恋人のこと、父のこと・・・。
 戦争と原爆で絶たれた家族や恋人との慎ましくも幸せな日々に思いを馳せながら、非戦の思いを静かに訴える。
 切なくも温かいファンタジー。

監督・脚本: 山田洋次

音楽: 坂本龍一
脚本: 平松恵美子
企画:井上麻矢
撮影: 近森眞史
出演:吉永小百合/二宮和也/黒木華/浅野忠信/加藤健一/小林稔侍/橋爪功/辻萬長
配給:松竹
公開日:2015/12/12
2015年/日本/130分
(神戸国際松竹 シアター① 02/26)
投稿者 愉悠舎 日時 2016年2月28日 (日) シネマの窓 | 個別ページ


2016年3月30日 (水)
家族はつらいよ

 「東京物語」で共演したキャストで山田洋次監督が再びメガホンを取る。

 親子三代が同居する平田家。
 当主・周造(橋爪功)と妻・富子(吉行和子)、長男・幸之助、史枝夫妻(西村雅彦、夏川結衣)と子供たち。
 それに次男・庄太(妻夫木聡)が一つ屋根の下に暮らす。

 忘れていた富子の誕生日に気づいた周造が富子に欲しいものを尋ねると、「別れて欲しい」と離婚届を突きつけられる。

 二人の離婚騒動に長女・成子、泰蔵夫妻(中嶋朋子、林家正蔵)も召集され家族会議が開かれる。
 家族会議に庄太の婚約者・間宮憲子(蒼井優)も加わる。
 集まった家族たちは不平不満をぶつけ合い喧々諤々。
 そんなドタバタ家族に憲子は「羨ましい」と言う。

 気持ちの底に沈んでいる変らぬ家族の愛をあぶり出し、薄れゆく現代家族の絆を呼び覚ます。

 ユーモアとペーソスに溢れた山田監督ならではの作品である。

 (神戸国際松竹 シアター② 03/25)
監督:山田洋次
脚本:山田洋次
撮影:近森眞史
音楽:久石譲
出演:橋爪功/吉行和子/西村雅彦/夏川結衣/中嶋朋子/林家正蔵/妻夫木聡/蒼井優/他
配給:松竹
公開:2016/3/12
2016年/日本/108分
投稿者 愉悠舎 日時 2016年3月30日 (水) シネマの窓 | 個別ページ


2016年5月24日 (火)
海よりもまだ深く

 次代のオピニオンリーダーを期待する是枝裕和監督が家族のありかた、折り合いのつけようをどこにでもいる市井の家族を通して追求する。

 淑子(樹木希林)は借金で苦労を強いられた夫に死なれ、ひとり僅かな年金で古い集合住宅(団地)に暮らす。
 別に暮らす長男の良多(阿部寛)は純文学のとある賞をとったものの一向に売れない。
 実家に、やって来ては金品を物色する良多。
 良多の姉・中島千奈津(小林聡美)は時々淑子のもとにやって来て良多を監視する。
 良多の元伴侶・ 響子(真木よう子)と息子・真悟(吉澤太陽)。

 彼ら彼女等が織り成す日常の葛藤を、良多が言う「小さな時代」にあぶり出している。

 「新しい家族」のあり様は淀みの底に沈んでまだまだ見えてこない。
 手探りの家族の行く先を是枝監督に期待する。

監督:是枝裕和
脚本:是枝裕和
出演:阿部寛/真木よう子/リリーフランキー/池松壮亮
配給:ギャガ
日本公開:2016/5/21
2016年/日本/117分

 (神戸ハーバーランド OSシネマ4 5/22)

投稿者 愉悠舎 日時 2016年5月24日 (火) シネマの窓 | 個別ページ


2016年9月 1日 (木)
ルーム&追憶の森

《ルーム》
 2016年2月、第88回アカデミー賞で作品賞ほか4部門にノミネートされたほか、トロント国際映画祭で観客賞(最高賞)に輝いた作品。
 この映画で母親を演じたブリー・ラーソンがアカデミー主演女優賞を初ノミネートで受賞した。

 アイルランド出身の作家エマ・ドナヒューのベストセラー小説「部屋」の映画化。

 7年前、男に鍵の掛かった部屋に監禁された母・ジョイは、そこで男の子・ジャックを出産。
 その子が5歳になったのを機に奪われた7年間を取り戻そうと、母子は命がけの脱出を試みる。
 監禁を解かれ母親の実家に戻った母子は、切れていた社会との軋轢に苦しむ。

 痛ましく重い作品だが、苦しみながらも徐々に社会への適応を果たして行く母子の一途な姿に、希望の光が見える。

 かつて監禁されていた部屋を訪れたジャックは、その部屋の小ささに気付く。
 小さな部屋が大きな世界に飛び立つジャンピングボードとして、未来への予感を抱かせる。

監督・脚本:レニー・アブラハムソン

出演:ブリー・ラーソン/ジェイコブ・トレンブレイ/ジョアン・アレン/ショーン・ブリジャース/ウィリアム・H・メイシー/トム・マッカムス
原題:Room
2015年/アイルランド・カナダ

《追憶の森》
 自殺の名所として有名な富士山麓の青木ヶ原樹海を舞台に、マシュー・マコノヒーと渡辺謙が怪しい雰囲気をかもし出す樹海を背景に、出口に向かうアメリカ人と日本人を演じる。

 死に場所を求めて樹海にやって来たアメリカ人男性・アーサーは怪我を負って樹海をさ迷う日本人男性・タクミに出会う。
 アーサーはタクミと共に出口を探して樹海を歩く。
 家族の元に必死にたどり着こうとするタクミ。
 最愛の妻に先立たれ、生きる目的を失ったアーサー。
 いつしか二人は互いの心を開いてゆく。

 明日を失った二人が、お互いの淵を覗きあうことにより、生への執着を灯していく。

 アーサーの妻役をナオミ・ワッツが演じている。

監督・脚本:ガス・ヴァン・サント
出演:マシュー・マコノヒー/渡辺 謙/ナオミ・ワッツ
原題:The Sea of Trees
2015年/アメリカ

 (神戸湊川 パルシネマしんこうえん 8/30)

投稿者 愉悠舎 日時 2016年9月 1日 (木) シネマの窓 | 個別ページ


2016年9月18日 (日)
スポットライト・世紀のスクープ&最高の花婿

《スポットライト》

 第88回アカデミー賞(2016年2月28日)で作品賞と脚本賞を受賞した。

〔あらすじ〕
2001年、マサチューセッツ州ボストンの日刊紙『ボストン・グローブ』はマーティ・バロンを新編集長として迎える。バロンは同紙の少数精鋭取材チーム「スポットライト」のウォルター・ロビンソンと会いゲーガン神父の子供への性的虐待事件をチームで調査し記事にするよう持ちかける。チームは進行中の調査を中断し取材に取り掛かるが様々な障害・妨害にあう。調査が佳境に差し掛かる頃、チームは9月11日を迎える。( Wikipedia 最終更新日 2016.09.17)

 カトリック教会のスキャンダルに挑んだ実話。

 絶大な権力を握るカトリック教会の神父による性的虐待を、告発に向けて苦闘する新聞記者たち。
 権力に妥協しないジャーナリストの真摯な姿勢は観る者の心を打つ。

・監督・脚本:トム・マッカーシー
・出演:マーク・ラファロ/マイケル・キートン/レイチェル・マクアダムス/リーブ・シュレイバー/ジョン・スラッテリー
・原題:Spotlight
・2015年/アメリカ/128分

《最高の花嫁》

 フランスで1200万人を動員したコメディ。

 フランスに暮すカトリック教徒のヴェルヌイユ夫妻には4人の娘がいる。上の3人はそれぞれアラブ人、ユダヤ人、中国人と結婚。
 娘婿たちの違う文化や習慣に悩まされながらもつつがなき日をすごしていたヴェルヌイユ夫妻のもとに、末娘がアフリカのコートジボワール出身の恋人を連れて来た。

 そこから、一家のドタバタが始まる。

 異文化を許容することの困難と素晴らしさを、ユーモアの中にシンプルに描いている。

 国を人を理解することによって「人」は大きくなって行く。

・監督・脚本:フィリップ・ドゥ・ショーブロン
・出演:クリスチャン・クラビエ/シャンタル・ロビー/アリ・アビタン/メディ・サドゥン/フレデリック・チョウ/ヌーム・ディアワラ/フレデリック・ベル
・原題:Qu’est-ce qu’on a fait au Bon Dieu?
・2013年/フランス/97分

 (神戸湊川 パルシネマ 9/16)
投稿者 愉悠舎 日時 2016年9月18日 (日) シネマの窓 | 個別ページ


2016年10月11日 (火)
太陽の蓋

 タブーであった原子力発電に果敢に挑んだ。
 東日本大震災時に起きた福島の原発事故を扱ったドキュメンタリードラマ。
 大震災発生の3月11日から5日間を、明らかにされている現在の視点から、当時の模様をリアルに描いている。
 政府(官邸)の言動を軸に、メーカー、東電、原発管理者、マスメディアなどがそれぞれの立場と思惑をもって恐怖の時間を凌ぐさまが、迫りくる最悪の事態をも視野に入れ、原発崩壊の時空を迫真のもとにさらけ出している。

 原発事故は何故起きたのか、責任はどこにあるのか、何ひとつ明らかにされぬまゝ、今、原発事故は風化の一途にある。

 この映画は風化を許さない者たちの、勇気ある一章である。
 明らかになっている事実に基づいて、閉ざされていた「原子力村」に風穴を明けた勇気に敬意を表す。

 なお、「太陽の蓋」は第40回モントリオール世界映画祭「Focus On World Cinema」部門に出品された。
 上映された理由に秀逸な作品であり、日本でタブーとなっている題材を扱っていること、ある層の立場に固執せず、さまざまな人々の声に耳を傾けていることなどがあげられている。

・監督:佐藤太
・出演:三田村邦彦/袴田吉彦/神尾佑/北村有起哉/大西信満/菅原大吉/青山草太/郭智博/中村ゆり/
・公開日: 2016年7月16日
・2016年/日本/130分/DCP〔※1〕(デジタルシネマパッケージ)

佐藤太監督
佐藤 太(さとう ふとし、1968年3月19日は、日本の映画監督。 宮城県仙台市出身。1995年、短編映画 「デートトレイン」 を発表。助監督として金子修介、和田誠、椎名誠、辻仁成、秋元康らの現場を経て、2005年 「インディアン・サマー」 で長編映画監督デビュー。 映画、テレビドラマの他、CM、ドキュメンタリー、ミュージック・ビデオ等も数多く手掛けている。( Wikipedia 最終更新日 2016.09.08)

(神戸・元町映画館 10/06)

〔※1〕DCP
デジタルシネマ (Digital cinema) とは、銀塩フィルムカメラの代わりにデジタル式のビデオカメラを使って撮影し、さらにその編集から配給、上映に至るまでの一連のプロセスにデジタルデータを使用する映画である。( Wikipedia 最終更新日 2016.02.14)

投稿者 愉悠舎 日時 2016年10月11日 (火) シネマの窓, 東北関東大震災 | 個別ページ