映画

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2012年8月20日 (月)
かぞくのくに

 在日コリアン2世のヤン・ヨンヒ監督が彼女の体験を基に映画化した。
 1997年(平成9年)の話である。
 25年前、「地上の楽園」を夢見て16歳の息子を北朝鮮に送り出した在日朝鮮人の父・母(津嘉山正種・宮崎美子)は、病気のため一時帰国する息子のソンホ(井浦新)を娘・リエ(安藤サクラ)と共に迎える。ソンホは監視人・ヤン(ヤン・イクチュン)を伴って現れる。
 ソンホの不遇を知る家族は戸惑い、ためらいながらも精一杯の歓待をするが、25年間の間に生じた家族の立場の違いは埋まらない。金日成のバッジを胸にするソンホ、北朝鮮団体の幹部の父、監視人・ヤンに向かって「あなたもあの国も大嫌い」と叫ぶリエ。
 それでも家族は慈しみ、励ましあって家族の絆を深めてゆく。
 滞在期間3ヶ月の治療期間では満足な治療が受けられず、父母は滞在期間の延長を望むが、その矢先ソンホに突然帰国命令が下る。
 ソンホはリエに言う、-あの国では思考を停止しなければ生きてゆけない、お前はたくさん考えろ、そしていろんな所を旅をして歩け-。

 体制に翻弄された在日朝鮮人一家の苦渋を、娘・リエの目を通して描いている。

                         (於 神戸・シネ・リーブル シネマ2 8/17)

監督:ヤン・ヨンヒ
脚本:ヤン・ヨンヒ
出演
津嘉山正種/宮崎美子/安藤サクラ/井浦新 /ヤン・イクチュン
配給:スターサンズ
公開:2012年8月
日本/100分

 拙ブログ「愚人章・覚え書」より転載

投稿時刻 18時09分 映画 | 個別ページ


2012年7月 2日 (月)
白磁の人

 大阪の梅田まで足を伸ばし、この日で上映が終了する映画・「白磁の人」を観た。

 日本の植民地統治下の朝鮮半島で、林業技術者として半島の植林事業に励む傍ら、朝鮮の白磁の魅力に魅かれた淺川巧の生きざまを、彼の故郷の山梨県八ヶ岳の麓と京城(現・ソウル)に映している。

 日本によって韓国が併合された4年後の1914年(大正3年)、朝鮮総督府の林業試験場の技手として淺川巧は半島での生活を始める。
 乱伐により荒れ果てた半島の山に、緑を取り戻す運動に力を注ぎ、淺川巧の手に依り開発された朝鮮五葉松の育苗法は、荒廃した禿山に大きな役割を果たした。
 また、淺川巧は朝鮮陶磁器の白磁を兄・伯教(のりたか)と共に掘り出し、美術評論家の柳宗悦(やなぎ・むねよし)らの協力を得て、京城に「朝鮮民族美術館」を設立した。

 半島を支配する朝鮮総督府の一員であった淺川巧は半島の自然と文化を深く愛し、その維持・発展に尽くしたが、1931年(昭和6年)、彼を敬愛した半島の人々が見守る中、朝鮮半島の土となった。よわい40の若さだった。

 植民地を支配する朝鮮総督府の尖兵でありながら、半島の人々の心を心とし、自然や白磁に向き合う淺川巧の純な心に、深い感銘を受けた。

                                (於 大阪・梅田ブルク7 6/29)

監督:高橋伴明
原作:江宮隆之(「白磁の人」河出書房新社刊)
脚本:林民夫
製作:小説「白磁の人」映画製作委員会
出演
吉沢悠/ベ・スビン/酒井若菜
配給:ティ・ジョイ
公開:2012年6月
日本/119分
 拙ブログ「愚人章・覚え書」より転載

投稿時刻 10時47分 映画 | 個別ページ


2010年12月15日 (水)
クロッシング(Crossing)

 朝鮮の庶民の生活を多くの脱北者の体験をもとに、キム・テギュン監督が脱北者一家の悲劇として、北朝鮮の咸鏡道にある炭鉱町の風物とともに描いている。

 サーカーで名を馳せた元サッカー選手のヨンス(チャ・インピョ)は炭鉱で働きながら、妻・ヨンハ(ソ・ヨンファ)と息子・ジュニ(シン・ミョンチョル)の三人で慎ましい暮らしを営んでいた。ヨンハが結核になり、その上妊娠する。妊婦にも害の少ない薬を手に入れるため、ヨンスは北朝鮮を脱出する。 豆満江(トゥマンガン)を渡り中国へ行ったヨンスは薬を買うために働く、脱北がバレたヨンスは、脱北ブローカーによって瀋陽へ、そこで韓国への亡命希望者に仕立てられ、ソウルへ送られる。
 その間、北朝鮮に残された妻・ヨンハは亡くなり、息子のジュニは父の後を追って豆満江を渡る。

 その後、父と息子は再会を果たせず、ジュニは無念の死を遂げる。

 脱北者を扱った各種の作品はプロパガンダの臭いを濃くしがちだが、私の胸を打つのは閉ざされた社会に生きる人間の深い絆である。いかなる体制に生きようとも人の触れ合いなくして人を語れない。ささやかな願いを、国からの逃避なしには叶わない社会体制は理不尽である。

 この映画の舞台となった北朝鮮の村をモンゴルと韓国の江原道に再現している。 モンゴルと北朝鮮の人々の顔立ちが似ているとこらから、モンゴルのバイヨ村に多くのロケーションを求め、北朝鮮の田舎の市場の風景もロケ地の一つとしている。

 (於いて:神戸・湊川パルシネマ 12/10日)
監督:キム・テギュン
出演:チャ・インピョ/シン・ミョンチョル/ソ・ヨンファ/チョン・インギ/チュ・ダヨン
脚本:イ・ユジュン

撮影:チョン・ハンチョル
音楽:キム・テソン
原題:Crossing
配給:太秦
日本公開:2010年4月
2008年/韓国/107分

豆満江と脱北ルート
「豆満江は中国と北朝鮮を分ける国境線となっており、北岸は中国吉林省延辺朝鮮族自治州、南岸は北朝鮮咸鏡北道である。北朝鮮を脱出する難民(脱北者)が越境する地帯として知られ、朝鮮人民軍の厳重な監視下に置かれている。豆満江河口付近で中国領は途絶え、ロシア領ハサンとなるが、戦時中は日ソ両軍の軍事衝突事件張鼓峰事件(1938年)の舞台であり、中国とロシアの国境画定は1997年に確定した」(ウィキペディア)

画像は「映画『Crossing』公式サイトより」




投稿時刻 16時34分 映画 | 個別