鑑賞

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2006年5月21日 (日)
殺陣師段平

  今年になってはじめて観劇を楽しんだ。
 「青年座」公演の「殺陣師段平」を神戸で観た。

 もと歌舞伎の殺陣(たて)師、市川段平は新国劇の頭取(楽屋の世話役)を務めていた。新国劇の主宰者、澤田正二郎は1917年(大正6年)に島村抱月、松井須磨子らの芸術座を飛び出し、大衆に親しまれる「新しい国劇」を目指し新国劇を旗揚げした。その年東京で旗揚げ公演を打ったが失敗し、大阪に本拠を移す。

 ここから物語りは始まる。演目「国定忠治」は新国劇としてはじめての立ち廻りもある時代劇、リアリズムの追及に苦闘する澤田に、歌舞伎の型しか知らない段平など頭になかった。
 それでも、殺陣に執念を燃やす段平は、澤田のリアリズムを理解しようと日夜立ち廻りに情熱を傾ける。そんな段平に心打たれた澤田は、段平に殺陣をつけさせる決心をする。段平の殺陣は評判を呼び、再び東京へ・・・。東京で成功を収めた澤田は「立ち廻り」から脱皮した新国劇の確立をもくろんだ。それを察知した段平は澤田のもとを去る。
 歳月は流れた。
 髪結いをしながら段平を支えてきた妻のお春は他界し、京都の一角でお春を「お師匠さん」と呼んで育ってきた段平の実子、おきくの世話になりながら病に伏せっている段平を澤田が見舞う、おきくと澤田の前で段平は国定忠治最後の立ち廻りを心象として演じながら息絶える。段平の好きだった知恩院の鐘が鳴る・・・。

 長谷川幸延の作で、島田正吾や辰巳柳太郎らの新国劇が演じてきた「殺陣師段平」を、劇団青年座五十周年記念公演の第一弾作品として、2003年に上演したものを再び現代に問うている。
 旧いものを抱えながら、新しいものを模索する段平の戸惑いとひたむきさを津嘉山正種が見事に演じている。氏の迫真の演技に激しく心を揺さぶられた。それとおきくを演じる万善香織のけなげさが光った。存在感のある女優への成長が期待される。
 関西弁の響きが心地よい。

 かつて、芸術座で松井須磨子らの演劇に「大衆迎合」と、批判し、たもとを分かった澤田正二郎が起こした新国劇は1987年(昭和62年)解散して今はもうない。
 芸術座は新劇の草創期に一時代を画したが、新劇という言葉も今や死語になりつつある。新劇と商業演劇の境もなくなってきている。
 演劇にかかわらず作品を論じる場合、良いか悪いかしかないという風潮が時代を席巻している。そんな時代ではあるが、劇団の旗揚げ時に新劇の精神を汲みとった劇団は、誰のために演じているのか、その視座を決して忘れないで欲しい。

                 (於いて:神戸文化ホール 中ホール 5/20日 マチネ)

劇団青年座公演
スタッフ
原作:長谷川幸延
演出:鈴木完一郎
殺陣:國井正廣
音楽:ノノヤママナコ
キャスト
市川段平:津嘉山正種
女房お春:岩倉高子
澤田正二郎:佐藤祐四
おきく:万善香織

(新劇とは20世紀のはじめヨーロッパ近代劇の影響を受け、坪内逍遥らの文芸協会、小山内薫らの自由劇場に端を発する。旧劇(歌舞伎)や書生芝居の流れを汲む新派に対して新しい演劇と呼ばれ、大衆的演劇の旗印を掲げた島村抱月らの芸術座の活動を経て関東大震災後の1924年「演劇の実験室」を標榜した土方与志・小山内薫らによって筑地小劇場が結成される。小山内の死後筑地小劇場は分裂し、1934年新協劇団が結成され、その後太平洋戦争中に国家の弾圧を受け、戦後復活し、多様な発展を遂げた。)
投稿者 愉悠舎 日時 2006年5月21日 (日) 鑑賞 | 個別ページ


2006年6月 7日 (水)
ロバート・キャパ写真展

 神戸大丸で開かれているロバート・キャパ展(5/31日〜6/12日)を観た。
 写真展は第二次世界大戦中に撮ったカラー写真や、キャパが撮影したその他のカラー作品を中心に「CAPA in COLOR」と銘打って開いている。
 若い頃、キャパの写真に強烈な印象を持った一人として、この機会を見逃すわけにはいかなかった。
 その写真は1936年、スペインの内乱を取材中に撮影した「銃弾に倒れる義勇兵」である。今回も彼の代表作として展示されていたが、戦場に今まさに散ろうとする人間の姿を、至近距離に引きつけ、兵士の断末魔の叫びをも画像に写し出しているような、キャパのモノクロ写真に釘付けになった日のことが思い出される。

 1913年ハンガリーのプダペストに生まれたキャパ(本名:エンドレ・フリードマン)は、1931年左翼運動に加担したという理由で故国を追われドイツのベルリンへ、政治学校で学びながら写真の仕事に従事し、コペンハーゲンで演説をするトロツキーの写真を撮り好評を得る。1933年ナチが台頭するドイツからパリへ移る。1936年スペインの内乱に取材した、銃弾に倒れる兵士の写真で世界のキャパとなる。第二次世界大戦中は「ライフ」誌などに派遣された写真記者として、ヨーロッパ戦線を中心に写真を撮る。1938年には中国で日本の侵略に抵抗する中国の人々の姿を撮影している。
 1954年日本を訪れ、関西では奈良、大阪、京都や尼崎などを訪ね、戦後日本の風景とそこに暮らす庶民の生活をカメラに収めている。日本を旅する途中「ライフ」誌の要請によりインドシナへおもむき、5月25日ハノイの南東約70キロのタイビンにおいて、地雷を踏み還らぬ人となる、40歳の若さであった。

 今回展示されている作品は彼の出世作である「演説するトロツキー」や代表作である「銃弾に倒れる義勇兵」、「ノルマンディ上陸作戦」のほかに戦後日本の風物などがカラーで数多く公開されている。

 キャパが残した作品は時代の証言であるとともに、戦争のない世界を願いキャパが残した、我々へのメッセージでもあろう。

主催:マグナム・フォト東京支社、NHK情報ネットワーク、毎日新聞社
投稿者 愉悠舎 日時 2006年6月 7日 (水) 鑑賞 | 個別ページ


2006年9月28日 (木)
原田の森ギャラリーへ

 阪急王子公園駅を降りて、西へ少し行ったところ「原田の森ギャラリー(旧・兵庫県立近代美術館) 」へ、広島在住の知人の絵が展示されているので観せてもらった。油彩F120(1940mm×1303mm)号の作品である。

 ギャラリーになる前の近代美術館の頃も幾度か足を運んだ。 ここで観たムンクの「叫び」は今も頭の中から離れない。

 「第1回 双樹会 兵庫支部展」「第36回 双樹会 兵庫選抜展」と銘打って100名あまりの人たちの作品が展示されてあった。絵の種類も油彩画、日本画、水墨画、水彩画と多彩で、充分に楽しむことができた。
それぞれの作品が個性的で私に訴えかけてくるものがあった。門外漢の私でも絵の素晴らしさを実感できた。

 双樹会の展示会は過去2度ほど名古屋でも観る機会があり、今回で4回か5回になる。
 昨年も同会の展示作品を同じこのギャラリーで観た。昨年は東館ギャラリーで今年は西館の1階〜3階を使っており、今年の方が展示作品にバラエティがあるようにに思われる。

 会のホームページに双樹会設立の趣旨(下に掲載)が掲げられている。
 聞くところによると画壇は閉鎖性の強い組織が支配しているらしい。そんな中で、開けた美術公募団体のひとつであることが察せられる。既成の権威を打ち破ろうとする気概を、この文章を読む範囲では感じる。

 その昔、大正デモクラシーと呼ばれる時代に、ここ「原田の森」で、新興美術運動に若き力を燃焼させた人たちがいた。

 双樹会が絵画を目指す人たちの励みになるよう祈っている。

双樹会ホームページより
 双樹会は、広範な絵画愛好家との連携をめざして、民主的かつ清新な実力主義の旗のもとに結成された「全国組織の美術公募団体」です。
 双樹会は、1976年(昭和51年)の第一回展以来、引き続き毎年、東京都美術館で公募展を開催しています。
 双樹会は、相互啓発と自己研鑽を基盤として、「一流の精神と自由で豊かな創造力」の開花をめざしています。
 双樹会は、美術団体にありがちな画風制約など、一派に偏することなく、お互いに知識を開き、技術の向上を図り、幅広く「自由闊達な様式」による作品を期待しています。
 双樹会は、会員を主軸とした運営で、会計はガラス張りです。また、徹底した民主化を貫くため、広く情報を集め、支部長などの意見を参考としている「平等で上下のない自由な集団」です。

投稿者 愉悠舎 日時 2006年9月28日 (木) 鑑賞 | 個別ページ
2006年11月21日 (火)

オルセー美術館展

 このところ続いた雨も上がり、初冬の淡い陽射しが湿り気の残る舗道に差し込む午後、 オルセー美術館展が開催されている神戸市立博物館へ足を運んだ。

 旧居留地は秋から冬へ急ぎ足だ。色づいた落ち葉がさざ波のように地上を這い、道行く人の足元に絡みつく。
 旧居留地内の最も大きな通り京町筋の一角に博物館がある。

 パリにあるオルセー美術館は1986年に開館し、1900年前後に活躍した印象派の作品を所蔵する美術館として知られている。
 セーヌ河をはさんで対岸にルーブル美術館がある。
 そのコレクションから140点を選び現在神戸で、来年になると東京都美術館でオルセー美術館展が開催される。

 ドガ、モネ、ルノワール、ミレー、マネ、ゴーギャン、ゴッホ、ベルナール、セザンヌ・・・。画壇に一時代を画した印象派・後期印象派画家たちの作品を目の当たりにし、時間の経つのを忘れた。

 その中でゴッホが描いた「アルルのゴッホの寝室」を二作品とも観る幸運に、今年恵まれた。
 1888年に南仏のアルルで描かれた最初の作品は、ゴッホが精神病院に入っている時損傷し、1889年に前作と同じ30号の作品を制作し、続いて母と妹のために少し小さい画を制作した。今日観た画は少し小さい方である。
 描き直した30号の作品はアムステルダムのヴァン・ゴッホ美術館にある。今年4月多くの人に混じってその絵の前に立った。

投稿者 愉悠舎 日時 2006年11月21日 (火) 鑑賞 | 個別ページ


2007年4月 1日 (日)
神戸花物語

 2007年3月30日(金)〜4月1日(日)の三日間、「神戸花物語実行委員会」の主催による各種花の展示会がポートアイランドの神戸国際展示場3号館で開催された。
 わが、連れ合い(千惠子)の作品もフラワーアレンジ部門・生花アレンジ部の末席を汚した。作品は「春風に揺れて」と題し、春の訪れに乱舞する花たちの躍動を表現している。


 

 

 

 

 


投稿者 愉悠舎 日時 2007年4月 1日 (日) 鑑賞 | 個別ページ

 



2007年4月 2日 (月)
蘭を使ったブケー

 昨日紹介した花の好きな女性の最新作です。

 データ
・テーマ : 蘭を使ったブケー
・生 花 : ラン、バラ、スマイラックス
・制作日 : 2007.04.01
・制作者 : 千惠子
・制作場所: 神戸フローラルアートスクール(元町)


投稿者 愉悠舎 日時 2007年4月 2日 (月) 鑑賞 | 個別ページ

 



習作おさめ

 わが連れ合いの花(嫁はつかない)修業も5月20日の実作、27日の講義をもって一応終了となる。

 連れ合いは中学時代より日本生け花に親しみ、未生流そして小原流の華道に励んだが、後年西洋のフラワーアレンジメントに興味を持ち、日本生け花に見切りをつけ、フラワーデザインの修業を重ねる。
4年ほど前、神戸フローラルアートスクールに出会い、門下生となる。当校は神戸の中華街南京町西端を直角に元町通りを越え、阪神元町駅西口へ向かう通りに面している。

 この5月で当校教師科程に終止符を打つ。

 最後の習作に花3題を制作した。


投稿者 愉悠舎 日時 2007年5月22日 (火) 鑑賞 | 個別ページ


2008年3月31日 (月)
神戸花物語2008

 2008年の「神戸花物語」が3月28、29、30日の三日間、神戸国際展示場において開催された。
わが連れ合いも広い展示場の末席を汚した。
 私は会場に足を運んでいないが、彼女が撮った自作品を紹介しよう。
 今年の「神戸花物語」のテーマは「神戸発、花のある暮らし」で、テーマに添った作品をフラワーアレンジ部門の生花アレンジの部に出品した。
 テーマは「住」、彼女が付けた作品名は「自然との共住」である。
 「共生」でなく「共住」なる発想がユニークだ。

投稿者 愉悠舎 日時 2008年3月31日 (月) 鑑賞 | 個別ページ

 

 


2008年5月11日 (日)
おとぎの国

 4月から6月にかけて淡路島全域にわたり私邸の庭が一般に開放されている。「あわじオープンガーデン(主催:あわじオープンガーデン実行委員会)」
 その一つ、先日顔見知りになった愉悠舎近くのM夫妻のガーデンにお邪魔した。
 私たちの先客にハルボン夫妻がいた。
 1000坪を超える広大な敷地に、野趣あふれる花や木が主張するでもなく、それでいて存在感を漂わせている。
 その上、何気なく佇む手造りのガーデングッズが、周りの風景にとけあい人の気持を和ませている。
 まるでおとぎの国に迷い込んだみたいだ。
 オーナーに写真撮影とブログへの掲載を許可してもらった。

 邸内には築140年 のギャラリーもあり、オーナーの絵などが展示されている。

 帰りに邸内近くのコンビニで買ったオープンガーデンの小冊子にオーナーは次のような一文を寄せている。
 「今年は庭のテーマは特に決めていませんが、花に加えて各庭に置いてある手造りのガーデングッズも一緒に楽しんで下さい。ギャルリーバンヤに展示してある作品もご覧下さい」

 

 


投稿者 愉悠舎 日時 2008年5月11日 (日) 鑑賞 | 個別ページ

 


2008年10月11日 (土)
美術展をはしご

  10月10日金曜日午前中、三宮で「ガイド」の活動を行う。正午に仕事を終え、ボランティア仲間のOさんと軽い昼食を共にする。Oさんは神戸港にあるタグボートの保有会社で永年働き、神戸港の盛衰を、身を持って体験してきた。華やかりし頃の神戸港の話を聞くのは楽しい。

 午後から知人が出品している作品を観に、徒歩で二ヶ所を巡った。

 まず、三宮のターミナルから1.5kmほど西にある兵庫県民会館へ、会館の1階に「ひょうごアーティストサロン」がある。このサロンは新進・若手アーティストの育成・支援を目的とし2006年に開設された。サロンの活動内容はアーティストにPR手法のアドバイスやマスコミへの橋渡しを行ない、県の施設を使って作品展やコンサートを開催する機会を提供している。また、アーティストのたまり場としても活用されている。


 サロンギャラリーで「兵庫県美術家同盟 新進作家展」が11月29日まで開かれている。知友、久谷義昭氏(明石市在住)の「頭骨」をはじめ8名のアーティストが作品を展示している。どの作品も私に強く訴えかけて来る。

 (上記作品の背後に不要な人物が映っている、下手なカメラマンのため、ご容赦を)

  県民会館から三宮のターミナルに引き返し、今度は阪急の線路沿いを歩く。阪急春日野道を経て、阪急王子公園駅近くの「原田の森ギャラリー」にたどり着く。ここは「第38回 双樹展」が開かれている。双樹展は「東京都美術館(上野公園内)」、「愛媛県美術館(松山市)」と回り、神戸の「原田の森ギャラリー」で10月12日まで「一流の精神と自由で豊かな想像力をめざす(双樹展のキャッチコピー)」と銘打ち気鋭の作家たちを謳っている。

 わが知友、吉川順子女史(広島市在住)はP120号の大作「雨あがる」を出品している。

投稿者 愉悠舎 日時 2008年10月11日 (土) 鑑賞 | 個別ページ