カテゴリ「シネマの窓」の記事
2011年11月11日 (金)
獅子の時代(テレビ映像)

CS(communications satellite)放送で過去に放送された、NHKの大河ドラマ「獅子の時代」が放映されるらしいと、ワイフが私に言ってきた。「観たいんやったら、見い~」と・・・。
我が家のBS、CS放送が映る受像機はワイフの所有物で、私の勝手にできない。
「獅子の時代」全51回の放送は、月~金曜日の午前中と、その再映が夜にある。極力観ることにしよう。
放送された1980年当時、断片的にしか観ていないが、最終回だけは記憶の底に焼きついて離れない。
会津藩の下級武士である平沼銑次(菅原文太)は幕末から明治維新を、敗者として弱者の側に身を置き、武士と敗者の矜持を持って生きる。
流れ流れた銑次が会津に戻り、自由民権運動に関わり(福島事件)、秩父へと流れ、秩父困民党で「自由自治元年」の旗を掲げ、明治政府軍と再び事を交える。
私が忘れ得ぬのは、「自由自治元年」の旗を片手に、もう一方の手に刀を持って、一人政府軍に立ち向かう銑次の姿と、銑次のその後を語るナレーターの声である。
ナレーターの語りは大体次のようなものであったと記憶している。
銑次の弟が兄を探して戦地を歩く、銑次の遺体は見つからなかったが、銃弾を浴びた旗に、「自由自治元年」と書かれた兄の筆跡を発見する。秩父困民党を最後に、銑次の姿はようとして分らない。後年、人は銑次のうわさを耳にする。足尾銅山鉱毒事件の弾圧の中で、幌内炭鉱暴動弾圧の最中に、激しく抵抗する銑次を、・・・。
今日、5回目を観た。
投稿者 愉悠舎 日時 2011年11月11日 (金) シネマの窓 | 個別ページ | トラックバック (0)
2012年1月23日 (月)
ALWAYS 三丁目の夕日’64

3tyoume12 3Dと2Dが上映されており、2Dで観た。
新幹線が開通し、東京オリンピックが開かれた1964年(昭和39年)、カラーテレビが夕日町三丁目にもやってきた。人々はカラーテレビの有る家に集まり、オリンピックを楽しむ。この年も下町の日々が明けて暮れる。
下町に暮らす人にも小さな変化が訪れる。小説家としての茶川竜之介(吉岡秀隆)は行き詰まり、自動車整備工場・鈴木オートの星野六子(堀北真希)は将来、草深い故郷で医療活動に取り込もうとする青年・菊池孝太郎(森山未来)と恋に落ちる。
鮮やかな五輪のマークが描かれる空であるが、スモッグに包まれる東京の空。高度成長の陰が忍び寄る東京。
物質文明に憧れず、苦境にあえぐ人々の中に生きがいを見出そうとする孝太郎のように、三丁目の住民は「幸とは何か」を模索し始める。
(於いて:109シネマズHAT神戸 Th8 01/22日)
監督:山崎貴
原作:西岸良平
出演
吉岡秀隆/堤真一/小雪/堀北真希/もたいまさこ/三浦友和/
薬師丸ひろ子/森山未来
配給:東宝
公開:2012年1月21日
2012年/日本/142分
投稿者 愉悠舎 日時 2012年1月23日 (月) シネマの窓 | 個別ページ
2012年2月21日 (火)
麒麟の翼

東京の日本橋は古くから「道」の始まりとされて来た。日本橋に建つ麒麟像を心の拠りどころとして生きる、カップルや家族たちの旅立ちと再生を、ある殺人事件を通して描いている。
麒麟像の前で青柳武明(中井貴一)が息絶えた。同じ頃、現場から逃げ出した男が、車に引かれて意識不明になった。警察はこの男を容疑者と断定し、状況証拠を固めて行く。
容疑者と同郷の恋人・中原香織(新垣結衣)は彼の無実を信じる。
世の中をナメている刑事・加賀恭一郎(阿部寛)は捜査の甘さにメスを入れ、関係者の内実に迫る。
表面や現象を撫でているだけでは決して見えてこない真実。偏見や差別に苦しむカップル、父と子の葛藤、体裁に走る企業や教師、現代の恥部を掬い上げながら加賀は、事件の本道に向き合う。
私、甘いんでしょうか?と、問う香織に加賀は応える、世の中を甘く見ている方がいい、絶望しないから。
(於いて:神戸 シネモザイク Cine1 02/20日)
監督:土井裕泰
原作:東野圭吾
脚本:櫻井武晴
出演
阿部寛/新垣結衣/黒木メイサ/溝端淳平/田中麗奈/中井貴一
配給:東宝
公開:2012年1月28日
2012年/日本/129分
投稿者 愉悠舎 日時 2012年2月21日 (火) シネマの窓 | 個別ページ
2012年5月 1日 (火)
わが母の記

井上靖の自伝的小説「わが母の記)を、日航機墜落事故を題材にした映画、「クライマーズ・ハイ」の原田眞人が脚本・監督を務めた。
時代は1960年代。小説家・伊上洪作(役所広司)は幼い頃母と別れて暮らしたことへのわだかまりを持ち続けていたが、父の死をきっかけに、失いつつある母・八重(樹木希林)の記憶の中に、別れた当時の母の思いを手繰り寄せようとする。母は壊れゆく心の灯をかき寄せ、息子に歩み寄る。
母と子の齟齬(そご)を、彼らを取り巻く家族の愛を、伊豆や軽井沢の透明な風景の中で静かに映し出している。
(於いて:神戸国際松竹 スクリーン2 04/28日)
監督:原田眞人
脚本:原田眞人
原作:井上靖
出演
役所広司/樹木希林/宮崎あおい/南果歩/キムラ緑子/ミムラ
/菊池亜希子/三浦貴大/真野恵里菜/三国連太郎
配給:松竹
公開:2012年4月28日
2012年/日本/118分
投稿者 愉悠舎 日時 2012年5月 1日 (火) シネマの窓 | 個別ページ
2012年6月 5日 (火)
アンダーグランド

1995年に公開され、その年のカンヌ映画祭でパルムドール賞を獲得し、昨年東京で再公開され、最近アンコール上映された作品が神戸・湊川のパルシネマで上映されている。
ナチス・ドイツに侵略された1941年からの旧ユーゴスラヴィアの戦いと内乱の歴史を、バルチザンで詩人のマルコ(ミキ・マノイロヴィチ)と電気工・クロ(ラザル・リフトフスキー)、そして女優のナタリア(ミリャナ・ヤコビチ)という二人の男と一人の女を通して描いた作品である。
バルカン半島の多民族国家・ユーゴスラヴィアは現在スロベニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、セルビア、クロアチア、モンテネグロ、マケドニア、(コソボ)の国々になっている。
崩壊してしまった国にひるむことなく、愛と狂気に生きぬいた人々を、現セルビアの首都ベオグラードの地下空間(アンダーグランド)に、ユーモアとペーソスで描いている。
ナチの侵攻、戦後のチトーによる建国、冷戦時代が終わり社会主義国家の崩壊と内乱。激しく揺れる戦争と体制に翻弄された人々の半世紀を、騒がしい民族音楽と乱舞を交え映し出し、民族と人間の誇りを高らかに謳いあげている。
悲しい物語であるが、楽しい映画である。荒唐無稽な場面も多いが、背景に歴史的な記録映像を使っての場面は見ごたえがある。3時間近い長さを感じさせない、たたみかける迫力がある。

「第2次世界大戦中、ナチス占領下のユーゴスラヴィアでレジスタントとして活動した愛国者たちの、半世紀に亘る可笑しくも悲しい壮大な物語。敵の眼を欺き首都の地下空間に潜んでせっせと武器を製造するが、金儲け企む男によって終戦さえ知らされず・・・やがて祖国は分裂。裏切り、恋、大混乱そして笑いありの破天荒な展開に添えてキャラクターと音楽も濃厚。人間ドラマ、社会的テーマ、娯楽性が見事に融合した、"百聞は一見にしかず"の世紀の大傑作《1996年カンヌ映画祭で大喝采を浴びパルムドール大賞》!私的な映画ベスト3のひとつです」(パルしん
KAWARA版 2012.5 319号 パルシネマ発行より)。
(於 湊川・パルシネマ 6/2)
監督:エミール・クストリッツァ
原作:デュシャン・コバチェビッチ
音楽:ゴラン・ブレゴヴィッ
撮影:ヴィルコ・フィラチ
出演
ミキ・マノイロヴィチ/ エルンスト・ストッツナー/ ラザル・リストフスキー/ ミリャナ・ヤコビチ/ スラブコ・スティマチ
原題:Underground
配給:紀伊国屋書店
初公開:1996年4月
再公開:2011年9月(紀伊國屋書店=マーメイドフィルム-2011.9.24《デジタルリマスター版》)
/フランス・ドイツ・ハンガリー/171分
投稿者 愉悠舎 日時 2012年6月 5日 (火) シネマの窓 | 個別ページ
2012年7月 2日 (月)
白磁の人

大阪の梅田まで足を伸ばし、この日で上映が終了する映画・「白磁の人」を観た。
日本の植民地統治下の朝鮮半島で、林業技術者として半島の植林事業に励む傍ら、朝鮮の白磁の魅力に魅かれた淺川巧の生きざまを、彼の故郷の山梨県八ヶ岳の麓と京城(現・ソウル)に映している。
日本によって韓国が併合された4年後の1914年(大正3年)、朝鮮総督府の林業試験場の技手として淺川巧は半島での生活を始める。
乱伐により荒れ果てた半島の山に、緑を取り戻す運動に力を注ぎ、淺川巧の手に依り開発された朝鮮五葉松の育苗法は、荒廃した禿山に大きな役割を果たした。
また、淺川巧は朝鮮陶磁器の白磁を兄・伯教(のりたか)と共に掘り出し、美術評論家の柳宗悦(やなぎ・むねよし)らの協力を得て、京城に「朝鮮民族美術館」を設立した。
半島を支配する朝鮮総督府の一員であった淺川巧は半島の自然と文化を深く愛し、その維持・発展に尽くしたが、1931年(昭和6年)、彼を敬愛した半島の人々が見守る中、朝鮮半島の土となった。よわい40の若さだった。
植民地を支配する朝鮮総督府の尖兵でありながら、半島の人々の心を心とし、自然や白磁に向き合う淺川巧の純な心に、深い感銘を受けた。
(於 大阪・梅田ブルク7 6/29)
監督:高橋伴明
原作:江宮隆之(「白磁の人」河出書房新社刊)
脚本:林民夫
製作:小説「白磁の人」映画製作委員会
出演
吉沢悠/ベ・スビン/酒井若菜
配給:ティ・ジョイ
公開:2012年6月
日本/119分
本文を拙ブログ「亭々の朝鮮半島」にも掲載
投稿者 愉悠舎 日時 2012年7月 2日 (月) シネマの窓 | 個別ページ
2012年8月20日 (月)
かぞくのくに

在日コリアン2世のヤン・ヨンヒ監督が彼女の体験を基に映画化した。
1997年(平成9年)の話である。
25年前、「地上の楽園」を夢見て16歳の息子を北朝鮮に送り出した在日朝鮮人の父・母(津嘉山正種・宮崎美子)は、病気のため一時帰国する息子のソンホ(井浦新)を娘・リエ(安藤サクラ)と共に迎える。ソンホは監視人・ヤン(ヤン・イクチュン)を伴って現れる。
ソンホの不遇を知る家族は戸惑い、ためらいながらも精一杯の歓待をするが、25年間の間に生じた家族の立場の違いは埋まらない。金日成のバッジを胸にするソンホ、北朝鮮団体の幹部の父、監視人・ヤンに向かって「あなたもあの国も大嫌い」と叫ぶリエ。
それでも家族は慈しみ、励ましあって家族の絆を深めてゆく。
滞在期間3ヶ月の治療期間では満足な治療が受けられず、父母は滞在期間の延長を望むが、その矢先ソンホに突然帰国命令が下る。
ソンホはリエに言う、-あの国では思考を停止しなければ生きてゆけない、お前はたくさん考えろ、そしていろんな所を旅をして歩け-。
体制に翻弄された在日朝鮮人一家の苦渋を、娘・リエの目を通して描いている。
(於 神戸・シネ・リーブル シネマ2 8/17)
監督:ヤン・ヨンヒ
脚本:ヤン・ヨンヒ
出演
津嘉山正種/宮崎美子/安藤サクラ/井浦新 /ヤン・イクチュン
配給:スターサンズ
公開:2012年8月
日本/100分
本文を拙ブログ「亭々の朝鮮半島」にも掲載
投稿者 愉悠舎 日時 2012年8月20日 (月) シネマの窓 | 個別ページ
2012年10月 5日 (金)
あなたへ

北陸の富山刑務所に勤める倉島英二(高倉健)に、ある人から亡き妻・洋子(田中裕子)の想いを託される。「故郷の海に散骨して欲しい」と、それと長崎県平戸郵便局、局止めの郵便物を受け取って欲しいと頼まれる。
英二はキャンピングカーで北陸から妻の想いを辿り、妻の故郷・平戸を目指す。
旅の途中、出会った人々との触れ合いに、妻・洋子の想い遺した忘れ物を洋子と過ごした日々の中に見つけ出す。
人は過去のいきさつを捨て、全てを許しあえる。
一期一会の出会いに感謝し、次代に生きる人たちに、夢を託す英二のいさぎよさを、都会と寒村の中に、淡々と描いている。
(於 ハーバーランド・シネモザイク・リーブル Cine3 9/30)
監督:降旗康男
脚本:青島 武
音楽:林 祐介
出演
高倉健/ 田中裕子/ 佐藤浩市/ 草なぎ剛/ 余 貴美子/ 綾瀬はるか/ 三浦貴大/ 大滝秀治/ 長塚京三/ 原田美枝子/ 浅野忠信/ ビートたけし
配給:東宝
公開:2012年9月
日本/111分
投稿者 愉悠舎 日時 2012年10月 5日 (金) シネマの窓 | 個別ページ
2012年10月28日 (日)
希望の国

社会派監督と言われている園子温(その・しおん)監督が、東日本大震災の原発事故をモチーフに、再び起きた大震災に翻弄される人々の悲哀を力むことなくドラマ化している。
老夫婦(夏八木勲・大谷直子)とその息子夫婦(村上淳・神楽坂恵)、それと隣に住む老夫婦(でんでん・筒井真理子)と息子カップル(清水優・梶原ひかり)らの生活を通して、災害に立ち向かう再生への「希望」を、廃墟の中にそれぞれのスタンスで描いている。
3月11日から?年後に発生した災害を想定し、3.11から何の教訓も得ていない国民に、刃(やいば)を浴びせている。
架空の物語であるが、実在の東北地方にロケし、現在もなお傷癒えぬ瓦礫の中に未来を志向している。
映画に登場する人たちの未来を、揺れ動く絶望と希望の狭間に写し、それでもなお希望を抱かせるのは、家族や隣人の深い絆と、人に頼ることなく自立しようとする人々の、アクティブな姿勢があるからだろう。
「希望のない国」に希望を持つには・・・。映画を観る一人ひとりに問いかけている。
(於 神戸・シネ・リーブル シネマ2 10/26)
監督・脚本:園子温
出演:夏八木勲/大谷直子/村上淳/神楽坂恵/でんでん
/筒井真理子/清水優/梶原ひかり
製作年:2012年
製作国:日本/イギリス/ドイツ/台湾
日本公開日:2012年10月20日
上映時間:133分
配給:ビターズ・エンド
投稿者 愉悠舎 日時 2012年10月28日 (日) シネマの窓 | 個別ページ
2012年11月 3日 (土)
ル・アーヴルの靴みがき

フランス北西部の大西洋に面したノルマンディーの港町ル・アーヴル、遠くにイギリスを臨む。
靴みがきで生業を立てているマルセル・マルクス(アンドレ・ウィルム)はその昔パリで雑文などを書きながら、自由奔放な暮らしをしていた。
マルクスには愛する妻・アルレッティ(カティ・オウティネン)と、愛犬ライカがいつも彼の帰りを待っている。慎ましい生活の中、妻や愛犬を心の拠りどころに日常をやり過ごしていた。
そんなある日、アフリカのガボンから難民が漂着する。
その中から一人の少年・イドリッサ(フロンダン・ミゲル)が逃げ出し、マルクスに出会う。少年は母が暮らすロンドンに行きたいと言う。マルクスの胸の底に眠っていたボヘミアン(※1)の矜持が頭をもたげる。
難民に厳しい国や警察の捜査網を掻い潜って、少年を母の元に送り届けるためにマルクスは奮闘する。
難民や移住者に対し、最近厳しい政策をとるようになったヨーロッパ各国。そんな中、難民に共感し、彼らに優しい眼差しをおくるマルクスと、彼を取り巻く下町の人々の日常を、湊町に温かくつつんでいる。
(於いて:神戸湊川 パルシネマ 11/01日)
監督・脚本:アキ・カウリスマキ
出演:
アンドレ・ウイルム/カティ・オウティネン/ジャン=ピエール・ダルッサン/ブロンダン・ミゲル/ジャン=ピエール・レオ
原題:Le Havre
配給:ユーロスペース
日本公開:2012年4月
2011年/フィンランド・フランス・ドイツ合作/93分
・2011年 カンヌ国際映画祭批評家協会賞
エキュメニック賞スペシャル・メンション パルム・ドッグ審査員特別賞
・2011年 シカゴ国際映画祭グランプリ
・2011年 ルイ・デリック賞作品賞
・2012年 ロッテルダム国際映画祭特別招待
(※1)ボヘミアン(Bohemian)
社会の習俗に逆らい自由奔放な放浪生活に生きる芸術家。チェコのボヘミア地方には古くからロマ(かつてはジプシーとよばれた)が多く住み、15世紀ごろフランス人はロマをこの名でよぶようになった。彼らの世俗に迂遠(うえん)な生き方に似た芸術家グループに適用し、1848年サッカレーが作品に使用して以来、英語として普及した。第二次世界大戦後はヒッピーなどのことばに代用される。(
日本大百科全書『小学館』 執筆者:船戸英夫)
投稿者 愉悠舎 日時 2012年11月 3日 (土) シネマの窓 | 個別ページ