わが心の神戸(7/8)

わが心の神戸・Ⅶ(過去ログ・神戸散歩)

「太陽の子」に会いに


 四日前、車検のために神戸の国道2号線沿いにあるディーラーへ車を預けに行った帰り、神戸港の兵庫埠頭(通称バナナ埠頭)の東側を歩いた。
 先日他界した灰谷健次郎氏の「太陽の子」の舞台となった「ふうちゃんの店のあるミナト町」を無性に見たくなったためである。
 私はこの町を二年前まで行き来していた。
 コウベというひびきからくるイメージとはほど遠い、油の浮いた海から吹いてくる潮風と、錆色の臭いが染みついた町である。
 私はこの街に漂う空気を好んだ。

 「太陽の子」は心の病を持つ父と琉球料理店を営む母と暮らす明るく前向きな少女、ふうちゃんの物語である。彼女が手伝う料理店「てだのふあ・おきなわ亭」の名前、「てだ」は沖縄の言葉で太陽「ふあ」は子という意味がある。

 「湊川の土手が発達してできたといわれる新開地を、東寄りに海の方へさがると、つきあたりに川崎造船所があり、造船所の正面にいたるまでの界隈は労働者相手の大衆食堂や酒場が軒をつらねている。すぐそばに市場があるので、早朝からとびかっているにぎやかな声は終日消えることがなく、夜は夜で、酔っぱらいの歌声やわめき声がおそくまできこえて、いったいこの町はいつ眠るときがあるかと思うほどだった」(太陽の子)。
 「てだのふあ・おきなわ亭」は人がすれ違うと肩が触れ合うような細い露地の一角にあった。大きな「造船所の正面にいたる」本通りと市場との間をこの通りが走っている。ここは震災で大きな被害を受け、その後人の行き来が極端に減った。狭い露地を猫が横切った。(写真右下)

 「市場の筋が切れると、そこにお稲荷さんがあった。赤い鳥居が幾重にも建っているところなど、いかにも下町の風景だった」(太陽の子)。
この神社には大阪の通天閣に居るピリケンさんよりひと回り大きいビリケンが、境内の奥にひっそりと座っている。(写真右上)

 「そこから南は、露地が格子もように通っている。つきあたりは港である、港には小さな造船所、船具店、倉庫などが目白押しにならんでいた。海はおびただしいはしけ、ダグボートの類で埋まってしまっていた」(太陽の子)。
 神社から左に行くと巨大な造船所がある。左に行かないで右に行くと小さな造船所の浮ドックや荷物を運ぶハシケ、それに船を曳航するタグボートなどが海を埋め尽くしている。陸にあがると船を扱う大小さまざまな鍛冶屋や倉庫などが所狭しとひしめき合っている。(写真左上)

 今、この町に「太陽の子」が生きた1970年代の猥雑さと活況を求めることはできない。町の潤いを助けてきた大造船所はその後二度の大リストラを強行し多くの労働者をこの町の外に追いやった。そして阪神・淡路大震災によって町が沈んだ。
 しかしながら、この町は死なない。コウベの原風景をつかさどったこの町の再生を願う人々によって、新たな町づくりがはじまっている。そして、この町はいま世間の目にとまり始めている。

投稿者 愉悠舎 日時 2006年11月30日 (木) 神戸散歩 | 個別ページ


笑顔の帰還


 トパーズ号が神戸に帰ってきた。
 29日、横浜に帰港したのち神戸を目指した。
 接岸を前にした人々に涙はなかった。横浜に帰ってきたときの感涙から醒めて、若者はおさな子のような笑顔を出迎えの人々に向け、壮年は静かに長旅の感激に酔っていた。
トパーズ号が地球一周の旅に出る前の7月、私はボーディングブリッジを渡って船内に入った。船内見学をしたそのまゝの姿で還ってきた。
 船体の喫水線近くに発生した錆をこすり落としている乗組員の足元に、波しぶきが跳ねた。
港内のどこかでトパーズ号の帰還を歓迎するのか、汽笛が曇天の空に響いた。
50年ものあいだ人々の夢を運んできた老体を、人はまだ休ませない。11月3日には神戸を発って、地球一周の旅に出る。
 この船が神戸に還ってくる頃、吹きすさぶ六甲おろしに身をかがめていることだろう。

投稿者 愉悠舎 日時 2006年10月31日 (火) 神戸散歩 | 個別ページ

EXPLORER



 13日の午後、秋の気配を思わせる雨の中、車でポートターミナル(新港第4突堤)に向かった。ここは税関、出入国審査及び検疫機能があり、外国のクルーズ船も出入りする。
かつて、この岸壁からブラジルや南米各地へ、移民船が旅立っていった。

 ポートターミナルのある新港第4突堤は水深10m〜12m、東側岸壁の長さが649m(西側岸壁は589m)、ボーディングブリッジ3基を有する長大バースである。ちなみに横浜港の大桟橋は水深12m、岸壁の長さが450mである。

 この突堤の東側岸壁に2隻のクルーズ船が並んだ。「ふじ丸」は自ブログに記載済みであるので「EXPLORER」に注目した。

 「EXPLORER」は5年前に建造された新しい船で、そのせいか外装は斬新で、いかにも現代の船といった趣がある。
 この船はアメリカのヴァージニア大学が主催している洋上大学船で、3ヶ月余りをかけて地球を一周している。その途中、神戸に5日間停泊する。前港はホノルルで次港は青島(中国)に錨を降ろす。

 帰りにバスから降り「EXPLORER」に向かう、アメリカの若者の一団に出会った。「ふじ丸」には「大学洋上セミナーひょうご2006」に参加し、30日間の旅を終えた日本の学生たちが下船を待っていた。
若くして世界を渡り歩ける機会に恵まれたアメリカや日本の若者は、地球とそこに暮らす人々の未来に責任を負う義務がある。

総トン数: 24,318tons
全長:180.4mts.
旅客定員:920名
建造:2001年
船籍:バハマ

 

 


投稿者 愉悠舎 日時 2006年9月14日 (木) 神戸散歩 | 個別ページ

 

 

 

夜の「飛鳥Ⅱ」


 一昨日横浜を発った「飛鳥Ⅱ」が太平洋をクルージング後、こよい中突堤に錨を下ろしている。
高浜岸壁から本船の全貌を撮り、中突堤に移動しタイタニックポイントと呼ばれる船首のデッキ部分を、カメラに収めた。

 船は夜も眠らない、煙突から吹き上げる茶褐色の煙は、船内の電力をまかなう発電機などの燃料をたいた排煙だろう。夜空に浮遊しながらどこへ消えて行くのだろうか。

 台風10号の接近のためか、ふだんは静かな港内に白い波しぶきが岸壁を洗っている。

 ハイウエイの上にそびえる関西電力とドコモの電飾が気になり、シャッターを押した。

投稿者 愉悠舎 日時 2006年8月16日 (水) 神戸散歩 | 個別ページ


にっぽん丸


 うだるような暑さの中、「にっぽん丸」が神戸港にやってきた。

 商船三井の所有で、1989年4月に就航した大型クルーズ客船「ふじ丸」の姉妹船として、1990年9月に就航した。
船名「にっぽん丸」としては3代目にあたる。
 「ふじ丸」同様展望大浴場がある。

 午後5時に接岸した「にっぽん丸」は、3時間後に韓国の済州島に向けてクルージングに出る。

船籍:東京  航海速度:18ノット 全長:166.6m
全幅:24.0m 喫水:6.6m
総トン数:21.903トン 乗客定員: 184室 532名(最大)
主機関:ディーゼル 10,450ps×2 巡航速力:18ノット


投稿者 愉悠舎 日時 2006年8月10日 (木) 神戸散歩 | 個別ページ

 

 

 


光ゆらめく


 先日撮った神戸港の高浜岸壁から見た夜景である。
 私がはじめてこの場所を眺めたとき、写真左端のポートタワーが建設中であったと記憶している。 その後、タワーのある中突堤とその向こうのメリケン波止場の間が埋め立てられ、帆の形をした海洋博物館が建った。

 建物からこぼれた光が海面をさまよっている。七色の光が海に遊んでいる。

 私の持っているカメラは3年前のもので「手ぶれ」防止装置はついていない。付いていても夜景を撮るには三脚がいるのだろう。
 夜景を撮りたくて長さ13cmの小さな三脚を買った。
 三脚を平たいところに固定し、デジカメを取付けた。撮影モードを「夜景」に設定し、フラッシュを「発光禁止」にした。
 画質を最大にした、最大といっても300万画素にしかならない。
 構図を決め、自動シャッターのボタンを押した。
 なんとか見れる夜景が撮れた。

投稿者 愉悠舎 日時 2006年7月31日 (月) 神戸散歩 | 個別ページ


トパーズ


 「神戸港は雨である・・・」石川達三の「蒼茫」を思い起こさせるようなそぼ降る雨の中、「トパーズ号」の船内見学会に参加した。
 この船はNGOのピースボートがチャーターしているクルーズ船で、地球一周の船旅を終え、次のワールドクルーズに出るあいだのひと時、船旅の宣伝を目的とする見学会が開催された。船の停泊バースは神戸港新港第4突堤(ポートターミナル)である。

 「トパーズ号」は1956年にイギリスで建造され、1994年に全面改装を行っている。
 すでに半世紀を経ており、船腹を見ればリベットが往年の面影を宿し、そこはかとない哀愁を漂わせている。

 船の概略は総トン数:31,500トン、全長:195m、全幅:27m、喫水:9m、乗客数:最大1,487名、航海速度:最高21ノット(1ノット=1.852km)でエンジンはタービンである。また、横揺れを緩和するデニーブラウン・スタビライザーが装備されている。

 タービンというのが気に入った。この船に乗って、ぐる〜と一周地球を回る旅に出そうな予感がする。

数日後に出発する地球一周船旅の寄港地は、次のようになっている。
横浜→神戸→ダナン(ベトナム)→シンガポール→ コーチン(インド)→モンバサ(ケニア)→マッサワ(エリトリア)→ポートサイド(エジプト)→イスタンブール(トルコ)→ピレウス(ギリシア)→ドブロブニク(クロアチア)→チビタベッキア(イタリア)→バルセロナ(スペイン)→カサブランカ(モロッコ)→ラスパルマス(カナリア諸島)→モンテゴベイ(ジャマイカ)→カルタヘナ(コロンビア)→クリストバル(パナマ)→プエルトケツァル(グアテマラ)→アカプルコ(メキシコ)→サンフランシスコ(米国)→ホノルル(ハワイ)→横浜→神戸

写真上から;
一番上:とどめる雄姿
二番目:「The TOPAZ」号の船首
三番目:ラウンジ
四番目:図書室
五番目:パブリックスペース
六番目:インターネットデスク

 

 

 

 


投稿者 愉悠舎 日時 2006年7月17日 (月) 神戸散歩 | 個別ページ

飛鳥Ⅱ


 横浜を母港とする「飛鳥Ⅱ」が神戸に入港した。
 旧・「クリスタル・ハーモニー」を改装し、「飛鳥Ⅱ」として今年再デビューし、1回目のワールドクルーズに横浜を出航したのが4月4日、101日間の世界一周航海を終え、7月14日中突堤にその雄姿を横たえた。

 今年の春、改修したばかりなのに、客室ベランダの手すりの、人が手を添える部分に腐食が見られる。地球を一周するあいだには、日本では考えにくい厳しい塩害が待ち受けている地域も多々あるのだろう。

 「飛鳥Ⅱ」は日本籍最大のクルーズ船で郵船グループが所有し、客室の全部が海に面しており、その上バスも付いている。ベランダ付き客室も半数あまりある。
 船内には和食レストランや大浴場もあり日本人が快適に過ごせる設備が整っている。

 旧・「飛鳥(28,856トン)」はドイツの船会社へ売却され、改修・転籍を行い、クルーズ船として再デビューした。船名を「アマデア(AMADEA)」と称し、世界のどこかで人々の夢を運んでいる。

総トン数:48,621トン  就航年:1990年7月
全長 :241m  最終改装 2006年
全幅:29.6m  船籍国:日本
喫水:7.5m  デッキ:8層
巡航速力:23ノット
横揺れ防止装置:フィンスタビライザー(※)
客室数/乗客数:400室/720名
ベランダ付き客室比率: 54%
乗組員数:360名
タイプ:ラグジュアリー
旧船名:クリスタル・ハーモニー
主エンジン:三菱MANdiesel電気推進4基(37,800kw)

(※)船酔い防止
両舷の船底近くに小さな翼を張り出し、航走中そこに働く揚力によって船体の横揺れを軽減する装置がフィンスタビライザー。揺れに応じて翼の角度を変え、揚力を変化させることにより、大きな横揺れ減衰力を生み出す。
その効果はきわめて大きく、最近では客船やカーフェリーをはじめとする多くの船で使われるようになった。
(財団法人 日本船主協会 海運雑学ゼミナール)

投稿者 愉悠舎 日時 2006年7月15日 (土) 神戸散歩 | 個別ページ


2006年7月 5日 (水)
アジサイの咲く森


 神戸の平野から有馬街道を車で15分ほど走り、小部(おぶ)峠を右に折れると、5分ほどで「森林植物園」に着く、六甲山の山ふところに抱かれるように総面積143ヘクタール(甲子園球場の35倍)の樹林が展開されている。

 この一角に「あじさい園」がある。25種・350品・5万株がこの時期、我々の目を楽しませてくれる。紫陽花は神戸市民の花として、この街の人々に永年親しまれてきた。

 雨の合い間を狙って「あじさい園」を目指した。神戸の自宅から車で10分ほどのところにある。

 雨あがりの森に咲く紫陽花は鮮やかだ。雨に濡れた花と葉があたりをはらい、群れた紫陽花が地上から浮き出て、三次元の世界を構築する。雨に湿った樹木の匂いにむせびながら、つづら折りの小道を縫った。

 



投稿者 愉悠舎 日時 2006年7月 5日 (水) 神戸散歩 | 個別ページ

シルバー・シャドー


 世界最高級豪華客船のうわさが高い。
 クルーズの運行会社シルバーシー・クルーズがシルバークラウド及びシルバーウインドに続いて就航させた3隻目で、シルバーウィスパーの姉妹船である。

 全室スイートルームでほとんどの部屋にプライベートべランダがある。当然ながら船外からもそのベランダを眺めることができる。都会にある高級マンションを見上げているようで違和感を覚える。
 そのベランダ越しにカーテンがはためいている。はためく向うに備えつけの調度品が見え隠れする。
ここは、さながら動くリゾートホテルといったおもむきがある。

 部屋の扉を開けて潮風に身を任せる、満天の星を仰ぎながらグラスを傾ける・・・。贅沢な空間を占領しながらの船旅を楽しめる日が、いつかくるだろうか。
 船旅を楽しむ人の多くはアメリカ人で、その他にイギリス人と日本人の利用があるらしい。

 シルバー・シャドーはまもなく太平洋クルージングに発つ。

(神戸港 中突堤BCバース 5/22日)
総トン数: 28,258トン  就航年: 2000年9月
全長: 182m  全幅: 24.8m  船籍国: バハマ
喫水: 6m  デッキ: 7層
乗客定員: 382名  巡航速力: 20.5ノット
乗組員数: 295名  客室数: 194室
エンジン:ディーゼル


投稿者 愉悠舎 日時 2006年5月23日 (火) 神戸散歩 | 個別ページ