鑑賞(1/5)

鑑賞

 劇団東京ヴォードヴィルショー「見下ろしてごらん、夜の町を。」

 久し振りに神戸で観劇を楽しんだ。JR神戸駅山側の楠公さん(湊川神社)西側を大倉山の文化ホールへと続く道がある。「緑と彫刻の道」と呼ばれている緩い坂道を上った。永年親しんだ道であるが、あらためて散策するとこの街の質の高さを感じる。小雨降る舗道に立つ木々の間に点在する彫刻の数々が、ライトに映える道を文化ホールへと急いだ。

 午後7時開演の「見下ろしてごらん、夜の町を。」を観る。

 この劇を演じる「劇団東京ヴォードヴィルショー」は誰にでもわかる軽演劇(ヴォードヴィル)をやろうと、佐藤B作らによって1973年に結成された。

 物語の舞台は東京から二時間半ほどの海沿いの元漁村の小さな町、今では東京の波が押し寄せヨットハーバーもある。その一角、倉庫を改造したライブハウス「六弦(むげん)」に朝な夕な出入りする音楽好きな人々の少し切ない物語を、ユーモアとフォークギターに乗せてフォーク世代の佐藤B作らが好演している。

 ライブハウスの主、売れないフォーク歌手が亡くなり、店長だったその息子が「六弦」を売りに出した。その話を聞きつけた会社員・木下藤吉、リストラ中の会社を辞めれば入る退職金でライブハウスを購入しようとこの町にやって来た。

 ライブハウスにはいろいろな人が行き来する。町のはじかれ者や変わり者の客たち、ライブハウスで演奏するミュージシャン、ヨットオーナーの音楽事務所を経営する老夫婦・・・。

 捨てたはずの音楽への夢に戻ろうとする木下藤吉を中心に、音楽の話に花を咲かせる。はなしの合間に見え隠れする人々の生きざまと日常。

 音楽をこよなく愛する市井の人々が織りなす、家族や隣人の愛と絆を謳い上げている。

作・演出:中島淳彦

出演
 佐藤B作・佐渡稔・石井愃一・市川勇
 山口良一・たかはし等・あめくみちこ・山本ふじこ
 大森ヒロシ・まいど豊・瀬戸陽一朗・中田浄・市瀬理都子
 京極圭・玉垣光彦・奈良崎まどか・羽賀蓉子・フジワラマドカ
 垣内裕一・村田一晃・金澤貴子
客演
 千葉和臣(海援隊)・谷本知美(演歌歌手)・園田容子(アコーディオン奏者)
 中島淳彦

投稿者 愉悠舎 日時 2009年2月14日 (土) 鑑賞 | 個別ページ



前進座~進め・・・♪♪

 14日の日曜日、神戸の文化ホールで前進座公演の「さんしょう太夫ー説教節よりー」をワイフや友人たちと楽しんだ。

 私が始めて前進座の演目に接したのは「天平の甍(1966年)」で、その後私の記憶にある前進座の演劇鑑賞は「俊寛(1969年)」、「出雲の阿国(1972年)」、「柳橋物語(1977年)」、「一本刀土俵入(1986年)」、「さぶ(1997年)」、等である。(年代は神戸演劇鑑賞会にて上演されたもの)

 前進座は1931年歌舞伎界の古い因習に反旗を翻した河原崎長十郎や中村翫右衛門らによって創立された。1931年といえば、前進座の創立から数ヵ月後関東軍が奉天(瀋陽)で満鉄の線路を爆破した柳条湖事件に端を発し、満州全土へと拡大していった、いわゆる満州事変が起こった年である。これより日本国民は泥沼の15年戦争へと引きずり込まれて行く。時代の暗い影を落としながら前進座は戦前、戦後と苦難の道を歩む。

 今、前進座の舞台を観ながら過去の舞台が記憶の底から甦ってくる。「天平の甍」で鑑真を演じた河原崎長十郎はその後、前進座を除名された。「俊寛」の中村翫右衛門や「一本刀土俵入」の河原崎国太郎はもういない。前進座の草創期を飾った人たちは舞台から去ったが、今も彼らの志は舞台を通して伝わってくる。地に足のついた骨太く泥臭いあり様は、時代の波に揉まれながらも今も変わっていない。それが私には嬉しい。

 往時、前進座の人たちと歌った座歌が口をついて出た。前進座~進め・・・♪♪。

投稿者 愉悠舎 日時 2009年6月17日 (水) 鑑賞 | 個別ページ


兵庫県美術家同盟展

 神戸市内で発生した新型インフルエンザに右往左往した行政のとばっちりを受け、延期になっていた「兵庫県美術家同盟展」が「原田の森ギャラリー」で開催されている。 昨夜来の雨も止み青空の覗く昼前、ワイフのお供をして展示場に向かった。いつもなら街に溢れている観光バスもまだ戻っていない。

  知友、久谷義昭氏(明石市在住)の作品を拝見した。絵に門外漢の私が、彼の作品に惹かれるのは時代の懊悩と哀愁が私の心の琴線に触れるためである。

 展示されている作品の中で一風変わった絵に惹かれた。「旅と出会い」と題した米田静生氏の絵である。1号(2号はなかったと思う)ほどの人物画を50枚ほどパネル一杯に敷き詰め一枚の絵に仕上げている。一人一人の人物像が作者に語りかけている眼差しの先を知りたい。

「第50回記念公募 兵庫県美術家同盟展」は6月23日8(火)~6月28日(日)の間、「原田の森ギャラリー 2F展示室」で開かれている。


投稿者 愉悠舎 日時 2009年6月24日 (水) 鑑賞 | 個別ページ


大英博物館 古代ギリシャ展

 「NHKネットクラブ」の会員である私に、NHKから標記の招待券が送られてきた。ワイフと二人、旧居留地の京町筋にある神戸市立博物館へ出向く。博物館の休館日を利用して行われた催なので、ゆっくりと鑑賞できた。

 紀元前、古代ギリシャ人が追い求めた人間の肉体と精神の在り様が、現代に息づいて私たちの心を揺さぶった。

 帰り、南京町の入口に在るスターバックスのテラスでココアを賞味しながら、道行く人をぼんやりと眺めていた。心のバランスを取り戻すひと時を、ワイフと共有した。

 本展の見所を、『本展では、ギリシャ黄金時代の傑作《円盤投げ(ディスコボロス)》をはじめ、大英博物館が世界に誇るギリシャ・ローマコレクションから厳選された彫像、レリーフ、壺絵など135点を紹介します。そのほぼすべてが、人間の「身体」を表現したものです。人間の身体こそが、美の極致 ― 古代ギリシャの人々がたどり着いた理想の「美」の全貌に迫ります』(古代ギリシャ展ホームページより)

・神戸展:3月12日(土)-6月12日(日) 神戸市立博物館にて
・東京展:7月05日(火)-9月25日(日) 国立西洋美術館にて


投稿者 愉悠舎 日時 2011年3月22日 (火) 鑑賞 | 個別ページ


第1回・吉川順子展

 5月7日の土曜日、大阪で遊んでいた時代の知人、吉川順子女史の個展が鳥取県で開かれた。

 広島市在住の彼女が鳥取県で初めての個展を開催するというので、駆け参じた。女史は私と同郷、愛媛県の松山に育ち、絵を志して大阪の大学に学び、その後散文に首を突っ込み、もの書きが集う場で私は女史と知り合った。

 後年、大阪市から岡山市に移り住み、現在は広島市でキャンバスに向かう日々を送っている。

 個展会場は松江市と鳥取市の中ほど、JR山陰本線浦安駅近くの、国道9号線沿にある「プラッツ中央」内のレストラン。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

投稿者 愉悠舎 日時 2011年5月10日 (火) 鑑賞 | 個別ページ

 


小説・「阪急電車(有川 浩)」を読んで

 久しぶりに若い作家の本を読んだ。1972年生まれの有川浩(ひろ、女性)が書いたベストセラー小説・「阪急電車」は、阪急今津線の宝塚駅から西宮北口駅の間に乗り降りする人々の哀歓を軽いタッチで描いている。

 阪急の路線は神戸線、京都線、宝塚線の三本を柱に、それらを補完する支線が絡み合い関西交通網の一翼を担っている。今津線は阪神間に存在する支線の一つである。

 ローカルな今津線の動く電車の中と、降り立つ駅で繰り広げられるしばしの非日常は、ことのほか重い。

 「本線」に乗り遅れた人、乗ってしまって降りる駅を探しあぐねている人、降りてしまった人、・・・。「生きる」場所を模索する様々な人が、小さい箱をめがけてやってくる。日常を少しばかり凌ぎきれない人たちを群像として、オムニバス風に綴っている。

 家族、企業、地域と次々に壊れ行く運命共同体にあって、見知らぬ他人が物理的に一塊になり、コンピューターに命を預ける「現代の恐怖」、文明の利器・電車の箱を運命共同体に見立て、「物言わぬ」乗客たちの口を開かせ、コミュニティの復活、そして再生を謳いあげる作者の眼差しは深くて優しい。

 ここに登場する人々の未来に「湿っぽい」予感はない。

 物欲にまみれた価値観を捨て、一期一会の邂逅に活路を求める人たちの未来が、そこにある。

 余談であるが、この物語は「西宮北口駅」を「西北」と呼んでいる。「北口」と呼んだ私は、もはや化石人間なのか。

追記;ブログをアップした直後、この本の「解説」を担当した児玉清氏の訃報が入ってきた。この文を語る氏の温みに、「ホッコリ」とした気分がまだ抜けないでいる。-合掌-

投稿者 愉悠舎 日時 2011年5月17日 (火) 鑑賞 | 個別ページ


知友の絵を観に

 ワイフと知友の絵を観に行った。

 第52回、「兵庫県美術家同盟展」が王子動物園前にある「原田の森ギャラリー」で開かれていた。最終日の昨日、車を「神戸震災復興記念公園」の東側の駐車場(土日も24時間600円)に停め、歩いて会場まで行く予定だったが、雨が少し強く降ってきたので急きょ電車に変更。電車の路線選択でワイフとひと悶着する。私はJRを主張するがワイフは阪急に固執する。ワイフの言い分はJR(灘駅)は会場に遠いから阪急(王子公園駅)にすると言う。私の感覚では同じような距離だと思うが逆らえない。三宮から歩いて行こうとしたものが、なぜ僅かな距離の違いに拘るのか?「頑固な人」だ・・・。

 「兵庫県美術家同盟展」は公募展で久谷(きゅうたに)氏はそこの会員である。会場でもらったパンフに次の一文があった。

 「昨年5月の第51回展のあと同盟新進作家展、兵庫県美術作家交流展、女流展、会員巡回展(加東市)など各地で発表を続けて参りました。ここに第52回目の公募展を開催出来ますことは大変喜ばしいことです。これもひとえに関係各位の皆様のご支援の賜と厚く御礼申し上げます。思えば昭和21年に青年画家15名によって創立されたこの会も途中活動が中止された時期もありましたが、昭和45年兵庫県立近代美術館が原田の森に竣工されたのを機に再び活動を始め年々出品者も増加し現在に至っています。現在会員は170余名を擁し県下最大の美術団体に発展しました。これからも公募によって新人に発表の場を提供しその発掘と育成にも尽力して参ります。県民の皆様には私たちの展覧会を一人でも多くの方々に観て頂けますよう念じております。」

 

 

 



投稿者 愉悠舎 日時 2011年5月23日 (月) 鑑賞 | 個別ページ


神戸の合唱団・かがり火

 先週の土曜日、親愛なる友人・K夫妻が所属する合唱団の定期演奏会を鑑賞させてもらった。
 ここ十年ほど観て来たが、当初は義理で足を運んでいたような気がする。最近になって此の楽団の味が少し分るようになった。私のような音楽に無知なものに、「味がわかる」というのは合唱団に失礼だが、要は私を楽しませてくれればそれで良いのだ。私は合唱を聞きに行っていると言うよりも、合唱団を観に行っている感が強い。
 その観点から舞台の演奏に目を凝らせば、団員一人ひとりが実に個性的だ。全員が登場する演目の衣裳は女性が白のブラウスに黒のスカート、男性は黒いスーツで統一されているが、夫々の衣裳の「襞のヒダ」に個々のアイデンティティーが見え隠れする。人とは少しだけ違った服装に加えて、楽譜を持っている人もいれば、持っていない人もいる。私から観ればムッシュKの、帽子を斜めにいなしている格好などはアル・カポネそのものだ。「酒とバラの日々」を歌うためか?胸のポケットに赤いハンカチを、ネクタイも赤を締めている。それに指揮をするわけでもないのに、スーツのボタンまで外したまゝだ。
 画一化を否定する合唱団のポリシーに敬意を表する。

 歌は夫々の個性がぶつかり合い、ハーモニーとなってそのパートで共鳴し、他のパートによって増幅され観客に届く。

 この楽団の評価を決めるのは観客一人ひとりだ。それには演奏者個々人が「個」を殺すことなく、「個」を発揮しなければならない。この合唱団には「個」を認める、大らかさがあるように思う。

 館内や会場の空気から、「かがり火ファン」の層が広がっている感がする。親から子へ、義理からファンへ、私もその一人だ。

 あまた数ある神戸の合唱団の中にあって、シニアから幼い子まで幅広い層が楽める合唱団として、その高みをめざして欲しい。
 「かがり火」に祝福を!「かがり火」に栄光あれ!

「・・・かがり火は1975年に神戸職場人合唱連盟を母体として発足し、昨年、創立35周年を迎えました。『かがり火』という名前は、経済情勢が厳しく団員数も減少するなど、合唱活動が困難になっていく中で、『合唱の火を絶やさぬように』という願いを込めて名付けられました。・・・」(34回定期演奏会パンフレット、見返し記載事項より抜粋)

投稿者 愉悠舎 日時 2011年11月 1日 (火) 鑑賞 | 個別ページ


「平清盛」全国巡回展 IN 神戸

 神戸で開催されている「平清盛・特別展」の招待券がNHKより送られて来たので、神戸市立博物館へワイフと一緒に出かけた。
 月曜日は市立博物館の休館日、混雑もなく観る人々もどこかのどかだ。

 「おめでとうございます!厳正な抽選の結果〇〇様が当選されましたので、お知らせいたします」と、招待券が送られてきた。
 前回、応募した「大英博物館 古代ギリシャ展」も当選したので、応募者全員に招待券を送っているのではないか?
 当った招待券の名称は「 【神戸】<3回目>NHK大河ドラマ50年 特別展「平清盛」特別鑑賞会 ご招待」。

 展覧会は五つの章で構成されており「第1章 平氏興隆の足跡」、「第2章 清盛を巡る人々」、「第3章 平氏の守り神―厳島神社」、「第4章 平氏の時代と新たな文化」、「第5章平家物語の世界」。

 みなと神戸の礎(いしずえ)を築いた平清盛、残され清盛にまつわる作品群にそれを見る。

投稿者 愉悠舎 日時 2012年4月 3日 (火) 鑑賞 | 個別ページ


合唱団 かがり火 定期演奏会

 一年の時の流れが歳とともに早くなってゆく。
 昨年のこの時期、「かがり火」の演奏会を観てからもう一年が過ぎた。
 冷え込む初冬の昼下がり、神戸文化ホールに鈴蘭台から車を走らせる。
 文化ホールの向かいの体育館の地下に車を止め、ホールに向かう。
 館内はあったかい。

 三十数人の団員が奏でるハーモニーに、しばし時の経つのを忘れる。

 35回を迎えた演奏会はその数字が物語るように、中高年がその中核を形成している。それでも響かせる歌声は艶があって若々しい。

 演奏会の構成をパンフレットで少し紹介すると、「・・・今回のステージは、4部構成となっております。第一ステージにて、優しさあふれる曲を数曲演奏いたします。皆さまに『ほほえみ』をお届けします。・・・第二ステージでは、中世イタリアで作られ、歴史を超えて愛されてきた曲を演奏いたします。さらに第三ステージでは、ディズニーでおなじみのポップな名曲たちと、久々のミュージカル仕立ての一場面をお楽しみください。そして最後の第四ステージでは公募にてお集まり頂きました団友の皆さんとの合同演奏にて、皆さまに元気をお送りします。全ステージを通じて、コーラスの楽しさ、歌うことの喜び、歌がもたらす感動を共有できましたら幸いです」。

 合唱団のスタンスが「感動の共有」にあり、我々聴衆をも充分楽しませてくれる。加えて、第二ステージの聖歌やモテット(宗教的声楽曲)などの質の高い合唱曲は天空から舞い下りる天使の歌声にも似て聴衆を酔わす(褒めすぎかな?)。

 今回の演奏会は、「聴かせる」合唱団への方向性もうかがわせ、次回に期待が持てる。

 夕刻、ワイフと明石海峡を渡り、途中、中華料理店で夕食をとり、淡路島の自宅へ帰り着いた。

投稿者 愉悠舎 日時 2012年12月 3日 (月) 鑑賞 | 個別ページ